2016年1月8日金曜日

全員が全員、最高の評価をする研修はおかしいかも?

全員が全員、最高の評価をする研修はおかしいかも?

全員一致は疑ってかかれ

ユダヤ人の古い言い伝えを紹介します。
全員一致の結論は疑ってかかるべし。
思考方法が間違っているか、誰かが答えを誘導しているから。

評価は誘導できる

企業研修では、終了後にアンケートを実施します。
わたしの場合、5段階評価だとすると平均点が4くらいを目指します。
全員の評価が最高得点になることはありません。

もし、全員の評価が高いとなると、講師は何らかの誘導をしているかも知れません。

社会人研修には、さまざまな経験を持っている受講者が集まります。
それぞれの受講者には共感される部分は異なります。
講師は、受講者の表情を観ながら、共感できる部分を探ります。

概念や理論を話しても実感が湧きませんから、事例を頭の引き出しからチョイスします。
事例を話して、ふんふんと納得していれば、当りです。

たとえば、巻き戻しを説明したいとき。
テープレコーダーには巻き戻し機能がありましたから、その年代の人にはわかります。
ところが、テープレコーダーを知らない世代が産まれつつあります。

若い世代には、巻くという概念がないのです。
その場合は、別の引き出しから事例を持ってきます。
実際にテープの実物を見せるか、図を描いて説明したりします。

講師は引き出しの数で勝負する


こうしていく内に、全員に当たりの話ができれば、評価は自然と上がります。
だから、引き出しの数で講師の評価が変わります。
良い講師は日頃から何にでも興味を持ち、本を読み、実践し、経験を重ねます。
そうした講師であれば、話題豊富でたくさんの引き出しを持っています。

そういう講師でも、全員が納得できるスマッシュヒット事例はなかなか難しいわけです。
もし、一人ずつ納得させていくと、時間がかかります。

適切な事例は難しい


たとえば、ゼロ・グラビティって登場人物が2人しかいないのに意外と深いドラマがつくれますよねというと、知っている人なら盛り上がりそうです。
知らないと、なにそれ、お正月映画? という状況になります。
昨日のテレビで放映されていたのならまだしも、映画館に行った人しかわからないネタです。
それに、これ、時事ネタですから数ヶ月すると使えなくなります。

このように、共感できる部分は人により違うわけです。
ある人に興味があっても別の人には、興味のない話すると、研修時間は長く感じられます。
だから、受講者にわかるように、表情を観ながら知識レベルを微調整していくのです。

アンケートの評価を変える心理テクニック


わたしは20年間、研修を実施していますから、テクニックでアンケートの評価を変えられます。

まずは、アイスブレイクを兼ねて研修前に何を学びたいかといった質問をします。
事前に質問していますから、事例の内容も受講者の興味を引く内容をチョイスします。

さらに、アンケートの時間に近くなったら、研修前に質問した学びを得られたかを再度確認します。
もし、得られなかったという人がいたら、どの部分が不足かを聞き出して補足します。
再び質問して、足りないという受講者に補足を繰り返します。

最後に「全員質問がありませんから、学習の目的は果たしましたね」という同意をもらいます。

ここまで仕掛けてから、アンケートをお願いすると、ダメという評価するのは難しいわけです。
全員に同意をもらっている雰囲気のまま、すぐにアンケートに書いてもらいます。

心理学に詳しい人には「一貫性の法則」をご存じでしょう。
人は、いったん自分の意見で同意してしまえば、前言撤回しにくい。
だから、アンケート前に同意してもらうのです。

だって、目の前の講師がアンケートに目を通します。
それでなくても、悪いことを書きにくい。

ましてや講師の誘導質問に同意してしまったからには、さらに悪い評価を書きにくい。
名前を記入しようが匿名だろうが、今、講師に読まれるとなれば、悪い評価を書きにくくなるのです。

研修会

真っ当な講師を目指して方針転換

もっとも、わたしは現在、そんな姑息なテクニックは使っていません。
受講者のコントロールをしようとすれば、できるのですが、誓ってしません。

正直に言えば、過去に使っていたことはありました。
NLPや影響力の武器を代表とする心理学的手法で受講者アンケートの評価を上げていたこともあります。
だから、前述の様にテクニックを解説できるわけです。

しかし、受講者のことを思えば、あくまで講師都合の姑息なテクニックなのです。

いまでは、そうした講師都合は辞めました。
アンケート結果よりも、まず、受講終了後にも受講者が自分で考え答えを出せる研修を心がけています。

長く使える考え方研修の方が実はお得

アンケートが良い研修は、大抵の場合、答えをすぐに教えてしまいます。
ただし、安易に答えを教える研修は、環境の変化で使えなくなります。
応用を利かせるには受講者自身で考えなければ業務に使えないのです。

答えが明確にわかるから受講者評価も最高でも短期しか使えない研修をするのか。
それとも、受講評価は多少落ちたとしても、長期に使える研修か。

受講者評価を高めて、短期しか使えない研修は講師としては最高です。
違うコースが次々と売れるからです。

でも、なんか違う。
そう思いました。
多少の評価を落としても、研修先に求められている人材開発を考えれば、長期にわたって考え続ける研修は、依頼側からしたら絶対にお得だと考えたのです。

でも、
でもですよ、現在まで実績として5段階評価で4以上の評価はされています。
もちろん、姑息なテクニック無しです。

やった!

研修の成果を確認したとき感激しました


数年前の受講者にお会いしたときの言葉です。
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あの時の研修、いまだに覚えていて業務に役立っています。
しかし不思議ですね。
他の研修は覚えていないのに……。
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そして、受講者からの推薦もあり、研修担当者から研修の継続依頼をされました。

正直いえば、以前は、アンケートコントロールするかしないか迷いました。
けれど、姑息な手段を辞める方針は間違っていなかったと、確認できたのです。
当たり前のことなのですが、なかなか辞められなかったのです。
いまでは、アンケートをコントロールするなど考える事自体、恥ずかしい思い出となっています。

それにしても、受講者の一言、感激しました。

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