2009年8月13日木曜日

IT童話「忘れっぽいリス」

リスは、森のあちらこちらに木の実を隠して忘れてしまいます。
しばらくすると思いもよらないところから、木の芽が出ます。
一説によると、リスは森を守るため植林しているといいいます。

そんな、忘れっぽいリスさんのお話。

リスはクマさんから森の仲間に情報伝達する仕事を任されました。

クマさんは、いろいろと要望を伝えます。

いままで、森の仲間にプリントを配っていた。
プリントの印刷の手間と配布するのが手間なので、何とかならないか。
情報は、過去の記録が取れるようにしたい。

などなどです。

リスは要望を聞くたびに、提案をしていきます。

「クマ村長のおっしゃりたいことは、掲示板があれば充分ですね」

「なるほど掲示板に伝えたい内容を貼り付けるのか」

「それで、新しい掲示物を貼ると、目印の旗を立てて更新されたことをどこから見てもわかるようにするのです」

リスの提案に、クマさんは、いちいち、なるほどと思えるます。

さっそくリスに掲示板の作成を、依頼しました。
しばらくして、掲示板を見に行くと黒板とチョークが置いてありました。

「プリントを貼るよりも、黒板の方がいいでしょう。なんと言ってもエコです」

「しかし、リスくん。黒板だと、掲示物の記録が取れないぞ」

「それなら、掲示物を写真に撮ってから、プリントすればいいじゃないですか」

「プリントするとエコじゃないだろう?」

「では、黒板にプリントを貼ることにしましょう」

「それなら、黒板をつくる必要がないから、普通の板が使えてもっと安く上がったのではないか?」

「何をおっしゃいますか、それは、結果論です。クマ村長は、現場を知らないのでしょうけれど、何事にも状況に応じてフレキシブルに対応することが大切ですよ。そもそも、村長は広い心がなければつとまりません」

クマさんは、ちょっと機嫌が悪くなりました。

リスに村長をとやかく言われる筋合いはないと思います。

それにリスの言うフレキシブルとは、行き当たりばったりのことだろうと、クマさんは思いました。

それにしても、頼んでいることと結果が、毎回毎回違っています。

合意したことが、まったく守られないのです。

それに、クマさんのいったことを、ぜんぜん覚えていない。

というよりは、その場では良い提案と思えるのですが、全体として整合性がとれていません。

リス流には、フレキシブルというのでしょうか。

どうも、ああいえばこういうというように、その場を取り繕っているように感じます。

クマさんの修正依頼をうけると、リスは、修正を加えるくらいなら一から作り直した方が早いといって、ほとんどをやり直してしまうこともあります。

おかげで、森の仲間に情報を伝えるという本来の目的が、いつまでたっても果たせません。

いつまでたっても、掲示板ができないので、クマさんは困りました。

しかたないので、掲示板をつくっている間、森の役所の待合室にプリントを貼ることにしました。

すると、これが大好評です。
役所の待合室に行くと、誰かがいるので交流の場になりつつあります。

いくら待っても完成しない掲示板よりも、役所の待合室がはるかに立派な情報伝達手段となりました。

役所の待合室もまんざらでもないと、クマさんが思ったときにリスが面会に来ました。

「クマさん。お約束通りの掲示板が完成しました」
時すでに遅しというか、クマさんには役所の待合室を情報伝達の場としようとしていた。

「ね、リスさん。情報伝達の効果的な方法が見つかったんだ。掲示板は取りやめようと思うんだけど」

「何をおっしゃるんですか! ここまでつくったものをアッサリとあきらめるんですか?」

「そうはいっても、すでに目的は達成してしまったからね」

「しかし、ご依頼は目的は掲示板だとおっしゃいましたよね」

クマさんは、情報伝達といったはずだと思いながら、リスの抗議に辟易して、しぶしぶ掲示板の継続を認めました。

いまでは、森には情報伝達の手段として、当初から使われていない掲示板といつも賑やかな役所の待合室があるそうです。

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