そろそろ、新社会人が入社を決めている事と思います。
以前、広告の研究をしていたころ、「これが我が社の新戦力」（たぶん、そういたタイトルだったと？）という全面広告を見かけました。
フォーバルっていう電話機器を販売している会社（当時）の広告です。
たくさんのコマ割りになっていて、社長が新人社員と握手している姿が並んでいます。
その、コマに社員の名前と出身地と所属部署がいちいち書かれているのです。
磯野サザエ（世田谷区）総務部っていう具合です。
注）フグ田だろうって突っ込みは無しです。あくまで仮名ですから。
個人情報保護法が施行される前ですから、こんな広告できたのでしょうね。
写真には、にこやかに笑う社長とぎこちなく笑う新人のコントラストがシュールです。
なぜ、広告の研究をしていたかというと、DRM（ダイレクト・レスポンス・マーケティング）という、景品をつかって欲しい人に直接問い合わせを誘導する手法が盛んだったからです。
だから、全面広告で社長と新人の写真を載せるのはムダな投資だなと思っていました。
しかし、これには裏があったのです。
あー。
わかった！
社長が、自慢するために広告した？ でしょ？
違うんですよ。
どっかのクリニックじゃありませんって。
社長がヘリコプター操縦できるって言う自慢でしょあれ。
そうじゃなくてですね、こういう理由です。
先に時代背景を説明します。
世に言うバブルの頃で、新人は内定しても他の会社に引き抜かれることが日常茶飯事でした。
会社によっては、研修でハワイまで連れて行く。
ウーン豪華。
しかも豪華客船で連れて行くから、他の会社もスカウトの手が付かないように工夫されていたのです。
今からだと想像付かない、凄い時代があったのですね。
ある時、フォーバルの大久保社長の講演を伺うことができました。
その中で、会社の沿革を説明されていたとき広告の話に飛び、広告のナゾが披露されたのです。
なぜ、全面広告で社長と社員の握手を載せたのか？
答え：他社にとられないように
全国紙です。
全面広告です。
知人、親戚も見るでしょう。
すると、
まー。ケンちゃん。
凄いところに就職できたわねー。
全国紙の新聞に載ったでしょう？
よい会社に就職できたわねー。
横浜のおばちゃんも鼻が高いわぁ！
そうだ、今度、横浜のおばちゃんにも社長さんに挨拶させて貰えないかしら？
新商品の保険ができたのよ……今度の保証はね……。
話が長引きそうなのでこの辺で、ケンちゃんと横浜のおばちゃん（職業：保険外交）との会話は終わります。
つまり、就職先を親類縁者に広く認知させることを目的とした広告なのです。
だって、就職先を大々的にしてしまったら、友達とかも話題にするでしょ？
おー、ケンタの就職先、決まって良かったな。
オレもな、自動車販売会社に就職決まってなぁ。
実はな、新人は一人５台売らなきゃノルマをこなせないんだよ。
どうだ？ 良い会社に入れた祝いに一台買わねーかぁ？
そんなわけで、ケンタくんの就職先はみんなの知るとことになるわけです。
すると、どうでしょう。
ケンタくんは別の会社に就職できなくなります。
「職業選択の自由」って、CMソングが流行っていたのですが、やっぱり転職しずらいですよネ。
どうですか？
広告も裏を読むと違う面が見えてきますね。
ついでに富士通の広告。
高倉健が、富士通のパソコン広告に出てきたことがあるんです。
この人ほとんどCMにでていなかったのに。
なにせ「ジブン、不器用ですから……」の俳優がパソコンですよ。
凄いですね。
これも、富士通の方に伺ったら、販売店さん向けの広告だとか。
あの、高倉健を起用した位ですから、このパソコン（FMV BIBLO）は力が、はいっていますよぉ！
という感じで、販売店をあおるわけです。
いやー。
大好きな、高倉健さんが薦めるんだから、売らなきゃいかんなー。
オレも一つ買おうかな。
えー？ 店長がパソコンはじめるんですかぁ？
信じられない！
いや、決意は固いぞトモコくん。
これからはパソコンの時代だ！
NIFTY（パソコン通信サービス）にも加入して、テレホタイム頑張るぞ。
店長たら、以前と言ってることぜんぜん違うんだから。
……テレホタイムでもNIFTYは、課金されますよぉ？
それより、トモコくん。
どうかね、今度プライベートでパソコン教えてくれんかの？
いやー、店長、それって、セクハラですよぁ。
注）パワハラでは？
販売店では、そんな会話も会ったかも知れません。
現在のFMVの広告、木村拓哉もその流れでしょうね。
そんなわけで、広告も裏を読むといろいろと見つかるかも知れません。
あなたの印象に残る広告は、なんですか？
その裏のメッセージは何だと思いますか？
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